Trade-off 経済という自然の摂理を味方につける知恵。

家計のやりくり、

企業のやりくり、

国家のやりくり・・・

うまくいく人がいれば、

うまくいかない人もいます。

経営や経済には生物学や動物界や植物界と同じような「自然の摂理」があるのではないでしょうか。

経営とは

経営とは何でしょうか?

経営学は「経済学」の下位にある概念です。

経営を理解するためには経済を理解する必要があります。

では、経済とは何でしょうか?

経済とは?

漢語における「経済」は、「世の中を治め、人民を救う」ことを意味する経世済民(けいせいさいみん)の略語で、これは東晋(とうしん)の葛洪(かっこう)によって記された『抱朴子』(ほうぼくし)の記述が初出とされます。

イギリスの経済学者ライオネル・ロビンズは、

経済学とは、ほかの用途にも利用可能な限られた資産を、あえて一定の目的のために用いる場合に、目的と資産の関係性を通して、人間のふるまいを研究する科学である

と定義づけています。

”Economics is the science which studies human behaviour as a relationship between ends and scarce means which have alternative uses.” Essay on the Nature and Significance of Economic Science,Lionel Robbins『経済学の本質と意義』1932年

ライオネルロビンズの経済の定義には3つの要素が存在します。

・ENDS, unlimited wants (目的は無限)

→人間には無限の欲求があり、目的には際限がない。

・MEANS, scarcity of resources(手段は希少)

→資源は常に限られている。材料、人材、資金、時間などのすべての資産(手段)は常に希少である。

・USES, alternative uses(用途は多様)

→すべての資産は別の目的にも使うことができる。つまり、人は常に選択を迫られる。(より価値の高い利用方法を見出されると、資産はそちらの目的に使用されてしまう。)

つまり、あちらを立てればこちらが立たずという宿命が経済には存在するということです。

あらゆる資産は希少である

また、ロビンズはこう付け加えます。

「目的を達成するための手段には限りがあります。 私たちはパラダイスから追放されてしまったのです。 私たちには永遠の命も充足の無限の手段もありません。 どこであっても、私たちがもし一つのことを選ぶならば、それ以外を放棄しなければなりません。たとえ別の状況では放棄したくないものであっても、それを放棄しなければなりません。

人間の行動において、さまざまな重要な目的を達成するための手段が欠乏しているということは、およそ普遍的な条件であるのです。

The material means of achieving ends are limited. We have been turned out of Paradise. We have neither eternal life nor unlimited means of gratification. Everywhere we turn, if we choose one thing we must relinquish others which, in different circumstances, we wish not to have relinquished. Scarcity of means to satisfy ends of varying importance is an almost ubiquitous condition of human behaviour.” Essay on the Nature and Significance of Economic Science,Lionel Robbins『経済学の本質と意義』1932年

Trade-off

つまり、人間として生活することにおいて常に迫られる普遍的な制約条件がTrade-offだということです。

トレードオフとは、一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ない状態のことです。

今日行く場所を一つ決めたら、その他の無数の場所にはいけません。

ご飯を食べている間は50m走はできません。

焼肉を調理してしまったら、その肉はしゃぶしゃぶには使えません。

このトレードオフという自然条件こそが、冒頭のうまくいく人とうまくいかない人を分けるポイントなのではないでしょうか。

トレードオフを意識して生活しているのか?

トレードオフを無視して生活しているのか?

これによって、自分が求める目的を達成するかどうかが確定するように思います。

opportunity cost

何かを選択したときの損失には見えやすいものと、見えにくいものがあります。

たとえば、大学院に進学するときの学費2年分は会計上の費用となります。

しかし、大卒で働いていたとしたら得られる年収2年分も見えない費用です。

年収2年分は逸失利益となります。これを経済学上のopportunity cost(機会費用)と言います。

時は金なり

実は”時間”という希少資産を利用する際には必ず見えない費用を支払っているということです。

たとえば、ビルゲイツは道端に落ちている1万円を拾うのに1秒を使うよりも、拾わずに通り過ぎるほうがよいといわれます。(ビルゲイツの秒給は3万円、分給183万円、時給1.1億円。年間資産増分1兆円。24時間×365日=8760時間、1ドル100円換算。2016/4-2017/3, $76B →$86B)

物を買うにしても、いろいろな会社に見積もりを出して比較検討して購入の意思決定をし、賢い選択ができていると思いきや、実は逸失利益がつみあがっているかもしれません。

時給が高い人は割引のために列に並ぶと機会費用において損をするかもしれません。

日本株で5%儲かったときに、米国S&P500インデックスが8%成長しているのであれば、それは3%損しているのと同じかもしれません。

「時は金なり」

経済において合理的な行動は、会計費用と機会費用(opportunity cost)のどちらも検討された経済学上の費用にもとづく行動であるべきです。

よりよいところに動いていくのは自然の摂理

自由経済ではopportunity costが最小の方向へと進みます。

会社員が年収を増やすのに最も効果的なのは、早いうちにキャリアを自由市場に開放することだと言われます。

たとえば、ソフトウェア営業の法人営業スペシャリストは初任給では年収が350-500万円くらいですが、転職すれば20代でも年収1000万円になります。

同じ場所で働くとなかなか給与は上がりませんが、転職すると市場でベンチマーク比較されるので、専門職の給与は上がります。

経済を知っていれば、より報酬の高いところに人が動くのが当たり前だということに気づきます。

市場よりも不利な条件で従業員を囲っても、じきに従業員は流出します。

市場よりも有利な条件を提示すると、自由市場から優秀な人材が流れ込んできます。

より価値の高い利用方法を見出されると、opportunity costを最小化するために資産はそちらの目的に使用されてしまいます。

経済における価値付けに関しては人も物も同じです。

例えば銅は昔、食器や青銅器に使われていましたが、現在では銅は食器に使うには高コストになりました。

食器はより調達が安く容易なガラスやプラスチックに代替され、銅は銅でなければならないもの(電線など)に主に使われるようになりました。金属素材産業の現状と課題への対応ー経済産業省

トレードオフが生じた場合、より価値が高く、需要が強く、需要が長期的・継続的であるポジションにその資源は流れていきます。

限られた時間と体力を何に使う?

やりたいことは無限にあるが、時間も資産も希少である。

世界一の資産家でさえ、時間と資金と体力には限りがあります。

あらゆる資源は限られている。

「なんでもできる」と思ったけど、「意外となにもできない」のです。

「時間はたっぷりある」と思ったけど、「何一つサマにならない」のです。

これは老若男女貴賤上下を問わず、あらゆる人に平等に課せられた経済の絶対条件です。

経済とは単なる儲かる儲からないというお金のやりくりの話ではありません。

経済とは、誰しもに与えられた制限時間と制約条件を認識し、価値を高める正しい選択をすることなのではないでしょうか。

経済を知ることは、本当に必要なことを実行し、人生を豊かにするために必須ではないでしょうか。

FOCUS

器用貧乏はいつまでたっても報われません。

経済という自然現象の支配下にあるすべての人が、

目的を確定し、行動を選択し、限られた時間と体力と資産を消費することが求められます。

自分が本当に求めるENDSに向かい、限られたMEANSを使う。ALTERNATIVE USESの誘惑に負けず、常にTRADE-OFFを迫られるなか、FOCUSを忘れない。

そして目には見えないOPPORTUNITY COSTを垂れ流していないか?常に別のよりよい可能性を世界中で模索する。

少年老い易く学成り難し

多様化が進み情報が氾濫している現代の環境であらゆる戦略はランチェスター戦略(一点集中)であるべきです。Aircraft in warfare: the dawn of the fourth arm by F.W.Lanchester 1916

経済に振り回されるのではなく、経済を手なずけるためにも、すこしばかりの経済概念を心の隅に留めておくとよいでしょう。

The following two tabs change content below.