経営戦略の歴史から紐解く、「超」競争社会の現代を勝ち抜くコツとは?

生後、言葉を覚えるまでの幼児は、善悪の判断が付かないと言います。

たとえば、「食事中、テーブルの上の水の入ったコップをこぼすのはダメなこと」だと覚えるためには、複数の言葉を記憶する必要があります。

 

赤ちゃんは叱られた理由がわからない

言葉を覚える前に親に叱られたとすると、

赤ちゃんはなぜ怒られたかが全くわからず、やみくもに生命の危機を感じ、混乱、不安定な中で過ごすことになります。

 

「食事中、テーブルの上の水の入ったコップをこぼすのはダメ」と理解するために必要な概念とは?

コップ

水という物質がある。コップという物質がある。テーブルとコップと水は独立した存在である。

自分は食事という時間を過ごしている。母と自分は違う存在である。自分の手や体は自分の意思が動かしている。

というように、ざっと挙げるだけでもこのような概念形成をして初めて、

「食事中に、テーブルの上の水の入ったコップをこぼすのはダメなことだ」と認識し、自分の行動をコントロールできるようになります。

 

 

言葉と概念を覚えてはじめて、自分をコントロールできる

水やコップやテーブル、そして、自分の体は自分で動かせるということを知って、

コップの水をこぼすと片付けが大変だということを知ってはじめて、

水をこぼす非効率さを知り、自分をコントロールできるようになるわけです。

赤ちゃん

つまり、赤ちゃんは行動をコントロールする以前に、膨大な概念記憶を必要とします。

言葉を覚えるまえに闇雲に怒ることは、情緒不安定と、成長の阻害を生み出すだけです。

 

 

成果を出すためには周辺概念を膨大に記憶する必要がある

このエピソードが示すのは認知的成長の仕組みです。

作話と記憶喪失

新しい目標を設定し、成果を出すためには、周辺に横たわっている概念を膨大に記憶する必要があるというわけです。

 

うまく経営するには?

たとえば、これを経営の文脈に適用すると、うまく経営しようとした場合、

経営にまつわる概念、人間の行動心理にまつわる概念を膨大に記憶する必要があるというわけです。

言葉を覚える前の赤ちゃんが水をこぼしてはいけないことを理解できないのと同じように、

概念を記憶する以前は、なぜ利益が出るか?なぜ利益が出ないか?の理解ができません。

 

概念の記憶に必要なのが文献

概念形成をするために有効なのが、書籍を読むことです。

実体験を増やすということも一つの手ではありますが、実体験と同じ認知の過程をたどれば、

実体験をしたのと同じような効果を得ることができます。

image

 

経営概念の形成過程を追う

赤ちゃんが水をこぼしてはいけないということに気付いたのと同じ流れで、経営にまつわる概念形成の過程を追えば、

どうすれば収益性や成長性の高い組織になるのか?がわかるということです。

なぜ歴史を知ることが重要化というと、それが認知の成長と同じ過程を辿るからです。

経営にまつわる古典、現代経営理論、現代マーケティング理論を紐解いていけば、今後必要なものが何なのか?が見えてきます。

 

①戦中戦後、モノを作れば売れた時代からモノを作っても売れない時代への移行

武力戦争から、経済戦争に移る過程で、経営戦略やマーケティング理論が生まれました。

モノを作っていれば売れていた大量生産、大量消費の時代から、モノを作っても売れない競争の時代への突入です。

たくさんの時間を使い、たくさんの人を雇い、拡大しさえすれば利益が出ていたという時代から、モノが余り、売れなくなる時代へと変化した頃に経営戦略理論は生まれました。

 

生産者志向から顧客志向へ

ピーターFドラッカーがこの世代の経営改革を起こした学者です。

ドラッカー

ドラッカーははじめて公の形で顧客中心主義を打ち出しました。

現在ではそんなこと当たり前だろうと思うかもしれませんが、当時は全く新しい、画期的な学説だったわけです。

顧客を大切にしていることを社会に示すために、

企業は経営理念を言語化し、全従業員に暗唱させ、理念を徹底して浸透させることが必要だと、

ドラッカーは主張しました。

ドラッカー以前は顧客志向という概念は存在せず、

したがって、企業はなぜ、急にモノが売れなくなったのかの理由がわからなかったわけです。

赤ちゃんがなぜ水をこぼしてはいけないのかがわからなかったのと同じことです。

 

②顧客志向を進化させ、マーケティングが生まれる

顧客中心主義が普及してくると、どの企業も横並びになってきます。

するとまた、モノが売れなくなってきました。

この時期に生まれた競争戦略は価値創造の戦略であるマーケティングです。

フィリップコトラー

マーケティング研究の第一人者はアメリカの経営学者フィリップコトラーです。

マーケティングは、自社が何を持っているか?顧客はどこにいるのか?顧客は何を求めているのか?最適価格はどこなのか?

など、市場展開のための情報を集め、意思決定をするための方法論です。

 

③マーケティングからポジショニングへ

マーケティングはブランド作り、価値創造の方向性を強めていきます。

マーケティングのなかでも、ポジショニングが得にクローズアップされるようになってきます。

ポジショニング戦略とは、顧客の頭の中に残るための戦略のことです。

顧客の頭に自社を刻み付けるために、企業を差別化し、カテゴリーNo.1を獲得するという理論がポジショニング理論です。

「何をやるか?というよりも、何をやらないか?にフォーカスし、戦を省略するのが戦略だ」と、

この時代の有名な経営学者であるハーバード大学経営大学院のマイケルポーター教授は言います。

マイケルポーター

 

 

どんなポジションで顧客の記憶に残るか?

成功の一つの手段は、たくさん顔を出すことだといわれることがあります。

業界内で中心的なポジションを占めるために、とにかく顧客に会い、販売代理店等のビジネスパートナーに会う。

とにかく露出を増やす。

つまり、広告を多用し、とにかく記憶してもらい、店頭で手に取ってもらうという戦略がとても流行りました。

広告がとても流行ったのは2000年までくらいでしょうか。

企業はこぞって自社のポジショニングを提示し、消費者に覚えてもらうということを続けました。

実務家だと、レスターワンダーマンや、デイビットオグルビーといった、アメリカの広告会社トップが方向性を示しました。

 

④インターネット、携帯電話などの情報技術の普及で競争が激化した

次に起こった大きな社会的変化は情報化でしょう。

インターネット

情報技術の業界でも、黎明期は作れば売れるという生産者優位の時期が数年ありましたが、

経営の歴史どおり、すぐに競争が激化しました。

 

 

情報技術の進歩により、業界の垣根がなくなった

インターネットや携帯電話が普及することで、業界の垣根がなくなってしまいました。

小売業がゲーム産業と闘う、

出版業がEC業界と闘うなど、

これまでは業界内で争っていればよかったものが、

業界の垣根を越えて、競争を行う必要が出てきました。

 

 

競争の激化で、差別化の細部にわたる表現が必要になった

各地でのバブル崩壊、リーマンショックとは、市場参加者が増大したために競争が激化し、経済構造がひっくり返りやすくなった結果の出来事ではないかと思います。

インターネットの普及で、消費者が簡単に情報を得ることができるようになると、小手先では通用しなくなってきます。

現代経営は差別化に加えて、とにかく徹底的な細部コントロールが必要になってしまいました。

顧客志向、ポジショニング戦略に加えて、経営理念を細部までデザインし、

顧客との接点の全てをコントロールすることが、真の差別化に必要だということがわかってきたということです。

コアコンピタンスの強化と徹底的な差別化、神経科学や認知の成長に沿った顧客への表現、表現の細部までのコントロール・・・・

市場での優位性を保つための、徹底的、狂気的なこだわりが必要な時代になってしまったということです。

 

⑤競争は「超」競争へ

この時代を潜り抜けた、アップル、グーグル、マイクロソフト、コカコーラ、トヨタといったグローバルブランドは、「超」競争に突入しています。

スティーブジョブズ

これらの企業はNo.1を取り続けており、あたかも、「競争していない」ように見えます。

しかし、競争していないように見えるのは、

競争を突き詰めた結果であって、競争をしていないわけではないのです。

競争を突き詰めて、圧倒的なNo.1になっているために、あたかもオンリーワンの企業価値があるように見えますが、

競争をやめた瞬間にその地位は陥落します。

したがって、競争が必要なくなって、個人の価値が尊重されるようになったというのは、全くの誤りで、

競争に勝ち続けるために、膨大な努力が必要になり、

徹底的な差別化の結果、競争がなくなっているような錯覚に陥っているというのが、正確な見方だと思います。

 

貪欲に学び、数字の読めるマーケターが覇権を取る時代

スティーブジョブズ、ビルゲイツ、セルゲイブリン、マークザッカーバーグ・・・

現代経営を成功させている経営者は、技術もわかり、マーケティングもわかる経営者であるということです。

グローバル企業のトップが、むさぼりつくすように本を読み、リーダーという地位を維持するためだけに、膨大なインプットをしていることからもわかるとおり、

これからの時代は超学歴社会に突入するでしょう。

 

∞将来の展望:学歴社会から超学歴社会へ

学歴よりも実力が重視される時代になったと言われることもありますが、全く真逆だと考えます。

正確には、大学や博士号という意味での学歴ではなく、経営に必要な情報を膨大にインプットする必要があるという意味での学歴社会です。

論文・法律・古典・・・・、より信頼性の高い情報ソースを確保し、幅広い業界の最新事情に精通しているかどうか?

一度トップを取ったとしても、永遠に学び続けなければ、即座に地位を奪われるでしょう。

発展途上国の先進化、さらなる情報化、経済の自由化・・・向こう20年で必要とされる勉強量は、過去20年の10倍以上になるのではないでしょうか。

 

学び続け、実践し続けることが、さらに必要とされる

より多くの情報を手に入れ続けるものが一人勝ちし続ける時代に入っていると感じます。

孫子の一節に、「彼を知りて己を知れば、百戦して殆うからず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己のれを知らざれば、戦うごとに必ず殆うし。」とありますが、

孫武

今は昔以上に、情報戦と学歴社会により世の中が成り立っているのではないでしょうか。

学び続け、実践し続けることに勝る経営戦略はないのではないかと思います。

 

自己教育を通して、小さな組織が大きな組織を駆逐する

情報が経営を強化する主要な要素だとすると、大企業であるか否かは全く関係がなくなってきています。

インターネットやソーシャルメディアの発達で大企業と同じ経営戦略を、小規模の企業や個人が取れるようになったということは、

個人にとっては大きなチャンスであり、企業にとっては脅威です。

 

明らかであるが、皆に認知されていないことを見分ければよい

ドラッカーは「どうやったら未来を予測できるですか?」という質問にこう答えました。

「明らかであるが、まだ皆に認知されていないことを見分ければよいのです」

 

それは、「言葉を覚える前の幼児が水をこぼしてはいけないと判断できるようになる」過程と同様ではないでしょうか。

つまりそれは、暗黙知を形式知に変え、分析的な判断をなす習慣を持つということです。

 

正しい自己教育が求められている

アマゾンが出版業界から生まれたわけではなく、

グーグルがパソコン業界から生まれたわけではないことからもわかるとおり、

イノベーションは業界リーダーから生まれるわけではなく、大企業並みの情報を携えた個人から出発します。

やる気さえあれば、必要な情報は無料で転がっています。

問題は正しい自己教育をするかどうかでしょう。